「うわべだけで裁くのはやめよ」2/20隅野徹牧師

  2月20日 降誕節第9主日礼拝
「うわべだけで裁くのはやめよ」

隅野徹牧師
聖書:ヨハネによる福音書7:19~24


説教は最下段からPDF参照・印刷、ダウンロードできます。

 今山口信愛教会の主日礼拝では、続けて「ヨハネによる福音書」のみ言葉を聞いています。今日は7章19節以下の箇所を味わいます。

先週読んだ10~18節ではイエスが兄弟たちの少し後で、「人目を避け、隠れるようにして」エルサレムに上って行かれたことが語られていました。十字架直前に「ろばに乗ってエルサレムに入られる場面」と違って「周りの人々に、救い主・キリストであることを、まだはっきりとお示しにならずに」エルサレムへ行かれたのです。しかし!命を狙われているにも関わらず、神殿の境内に上っていって教え始められたということを見ました。

ヨハネ福音書は、他の福音書と違ってイエスが「繰り返して」エルサレムに行き、大切なことを伝えられた様子を描きます。つまり!十字架にかかられる直前の短い滞在だけでなくて、その前に「大切なことを伝えられた」ことを描いているのです。

それは「エルサレムの人々を大切に思い、正しい道に立ち返らせたかった」からなのではないかということを先週お話ししました。それだけ、エルサレムは霊的に荒廃した状態だったのです。

律法学者など、宗教指導者たちが民たちに教えるその内容は、律法を授けて下さった、天の父なる神の御心とは遠くかけ離れたものだったのです。18節にあるように「自分勝手に話し、自分の栄光を求める」状態だったのです。つまり「自分が偉く、賢く見られるため」に律法が利用されていたのです。

この状態で、イエスは「愛をもって教えられる」のが今回の箇所です。「周りの人たちがイエスをどう捉えたのか」ということを通して「私たち自身への教訓」も教えられる箇所です。共に御言葉に聴いてまいりましょう。

今回取り上げる19節から31節ですが、新共同訳の区分と同じように、24節から前と25節から後という感じで二つの内容に区分できます。まず後半の25節から見てまいりましょう。

まず25節と27節をご確認ください。ここは「仮庵祭のとき、神殿で人々になされたイエスの教えを受けて」のものです。

ここで分かるのは「議員たちをはじめとする、ユダヤの宗教指導者たち」がイエスのことをメシアだと認めたのではないか、と人々が思ったということです。つまりイエスの教えに対して反論できなかったのです。

 しかし、一方で人々は「イエスはメシアとは違うだろう」といっていたことが27節で分かります。これは当時の人々の思い込みから来ています。

ダニエル書の預言などから「メシアは超自然的に、突然に現れる」という理解が当時広まっていたのですが、人々はこれをよく考えよく祈ることをせずに、信じ切っていました。だから「イエスがナザレ出身で、ヨセフ、マリアの子だと知っている」ことを理由に「イエスはメシアではない」と自分勝手に判断したのです。

これに対して28,29節、イエスは「大声で!」答えられます。この後の箇所にも「イエスが大声で言われた」場面がでますが、特に大切なことを強く伝えられるとき「大声で言われる」のです。

何を言われたかというと「私は自分勝手に話しているのではない。天の父なる神から遣わされてきたのだ」ということでした。しかし、これを「神への冒涜」ととった人々がイエスを逮捕しようとしたことが書かれています。

その一方31節で「イエスを信じる者が大勢でた」と記されています。その信じた人たちが「メシアが来られても、この人よりも多くのしるしをなさるのだろうか」と言ったと書いてあります。つまりは「世の中で信じられているメシア像は誤っているのではないか」と気づいたというのです。

当時は律法学者や議員などの指導者階級が「これが正しい考え方だ」として示したものが、信じ込まれていました。その中には間違ったものもたくさんあった訳です。メシア・救い主の来臨に関しても、彼らの間違えた理解が絶対になっていました。それでイエスは「大声を出すほどの熱意を込めて」指導者たちによってねじ曲げられた「神の真理」を教えられたわけです。

残りの時間で、前半の19節~24節を見ますが、ここでも今見たように「当時、世の中で正しい」と思われていたことが、「神のみ旨と真反対であったこと」が明らかにされます。そんな中で「何とか人々に真理を知ってほしい」と願われるイエス・キリストの姿をみてまいりましょう。

それでは19節から24節、大切ですので私がもう一度読んでみます。

この話の伏線になっているのが、5章に記された「ベトザタの池で、安息日にある人の病気を癒されたこと」なのです。

そのことを見聞きした人は皆「驚いたのだ」と今回の箇所の21節から分かります。

これは「イエスの癒しの奇跡を見て驚いた」というよりも、イエスが「あの厳格に守ることが求められている安息日の掟を破ってしまった」と驚いたのだ、という意味だそうです。

この時の民たちは「律法に縛られ、がんじがらめにされた」状態でした。今、水曜日の祈祷会でローマ書7章を学んでいますが、イエス・キリストに出会う前のパウロもそうでした。神が与えて下さった「善いもの」であるはずの「律法」を通しても、罪が働き、気づかないうちに「罪に売り飛ばされていた」ということが起こるのです。

今回の場面で挙げられている「安息日の律法・掟」で考えてみましょう。

この掟は出エジプト記19章8節で出る十戒の中の「4番目」の大切な掟・律法です。

神がモーセを通して、この掟を与えられたのは「人々を愛しておられた」からであって「掟によって、自由を奪う」ためでは決してないのです。

 人間は神と共に歩み続けることが、幸いであることを造り主である神はよくご存知です。だからこそ「1週間に一度、神の前に出て、神を礼拝する」ことを教えて下さったのです。

 そして、これは「人間が、仕事から離れて、体も心も休むため」という目的もあるのです。開かれなくて結構ですが、出エジプト記19章10節には「奴隷も、家畜も休まねばならない」とあります。このように安息日の掟からは「神の人々への愛」がはっきりと見て取れるのです。

 しかし!この「神から与えられた善い掟」を通して罪が働くのです。この頃には、律法の本質の「愛」が忘れ去られ、「安息日は、何がなんでも守られねばならない。いかなる仕事もしてはいけない」と曲解されるようになったのです。その状態はイエスが24節で言われるとおり「うわべだけの裁き」で、全く本質が抜け落ちて「神の御心に反した」裁きが日常的に行われる状態でした。

 その結果「多くの人の命が殺された」のです。実際の殺人事件は少なかったかもしれません。安息日でも緊急の医療行為は許可されたでしょう。しかし私は思います。

 掟の文言に執着するあまり、「心が殺された」ような状態にあった人は、当時沢山いたのだと!

 羊飼いや取税人など聖書にはそういう人が沢山登場します。「律法違反者」として「罪人のレッテル」を貼られた人たちがどれだけ苦しい思いをして生きていたでしょうか。

隣人の命を軽んじて、殺そうとすることは、神を、そして「イエス・キリストを殺そうとすること」と同じです。神の独り子イエス・キリストは「最も小さい命」が軽んじられるなら悲しまれ、その命を愛し、憐れむなら「自分のこととして喜ばれる」のです。

今回、私は深く黙想していて、19節の言葉が一番胸に迫ってきました。   

「あなたたちは誰もその律法を守らない。なぜわたしを殺そうとするのか」という言葉です。民たちは「自分があなたを殺そうと思っているはずがないだろうが!」と言ってあざ笑います。でも!人の命を大切にしない、彼らの罪がイエス・キリストを十字架にかけることにつながる、ということが全く理解できていないのです。

そして、「イエス・キリストを自分が十字架にかけた」と捉えられていない…それは私たちも同じではないでしょうか? 「隣人を愛せない、私たち一人ひとりの罪」がイエス・キリストを十字架に追いやった…ということを、正直に認め、そして深く心に留めるべきだ、と痛感しました。

私自身、本当に隣人が愛せていないことを痛感させられます。とくにこの2年「感染から身を守る」ということを口実にして、人に関わること、人を愛することを止めてしまったことがたくさんあります。

この私の姿勢は、律法の根本の精神である「見返りを求めない愛」に大きく反していますし、造り主である神、そして御子イエス・キリストを悲しませています。

もっというなら「神、キリストを殺そうとしている」と言われても反論できない状態だと思います。本当に罪深い自分に気づかされます。

 だからこそ、イエス・キリストがこんな私を愛してくださったことをより一層感謝して受け止め、イエスの霊である「聖霊」に満たされ、その力で「隣人を愛し」「神の御心を行う者」に変えていただきたいと願います。

この後、教会懇談会が持たれます。今回は「コロナ禍で失われた、教会の交わり」を再び豊かに持つために、皆さんで協議します。とくに「教会にはじめて来られた方」が、つながり続けることができるように、交流を深めることができるようにと願います。それは神の御心であることは間違いありません。この先も、律法の根幹にある「愛」を全うする教会として歩んでまいりましょう。(沈黙・黙祷)

 

≪説教はPDFで参照・印刷、ダウンロードできます≫

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