教団教誨師会初日の講演は、弁護士で、カリヨンこどもセンター(こどものシェルター施設)創設と運営 に関わり、こどもの人権に真正面から取り組んでいらっしゃる、坪井節子さんがご自身の28年にわたる壮絶な体験を交えながら、お話してくださいました。
坪井先生の講演は、一度お伺いしたことがありましたが、今回は矯正教育の現場にいる教誨師対象ということもあってか、豊富なこどもたちとの関わりを交えながら、非行へと向かってしまう背景と、人権擁護に関わる弁護士としてのお働きについて、お話くださいました。
その夜、妻にメールしました。「坪井先生の講演は、こどもを持つすべての親と、学校現場の教育者に聞いて欲しい」と。
講演において、こうしている間にも、生きるか死ぬかの思いを、小さな胸に抱えて夜を過ごしているこどもたちがいる現実を知らされ、衝撃を受けました。学校で友達からの陰口や「しかと=無視」によるイジメに、親にもSOSを出せずにうずくまっているこどもたちがいるということに、胸が締め付けられる思いがしました。
現在の大きな問題は、虐待と非行とのこと。最近では教育虐待(親の過剰な教育熱心に起因する虐待)が顕在化しているとのこと。
数知れない困難を抱えたこどもたちが行き場を失い、誰か一緒にいて欲しいと夜の世界を彷徨う時、心と体に痛みを伴う現実から逃避して生きようとしている仲間と出会い、薬物に手を出し、挙げ句、社会から「悪い子」のレッテルを貼れ、益々行き場を失っていく現実を知らされました。
ご自身、三人のお子さんを持つ親として、こどものことなら理解できるはずと飛び込んだ世界が、実は大きな間違いで、傷つくこどもたちを前に、ただただ無力を感じ、オロオロするばかりだったそうです。しかし「行き場を失ったこの子をもう一人にはしない」をモットーに体当たりで一緒にもがき、祈り続け、今もその渦中にいらっしゃる姿に敬服しつつ、学ばされました。
いま、こどもに何が起こっているのか。私が教誨する施設は、少年院ではありませんので、坪井先生の講演が自分にどのような意味を持つのか未知数でしたが、犯罪の根底にある、こどもの大人や社会への不信を知る機会となり、今後の教誨のアプローチに大きな示唆を与えられました。また、人権について、深く考える機会いとなりました。
私自身、子を持つ親として、こどもと親のパートナーシップ(上からの威圧や恐怖、暴力で支配せず、互いに尊重しあう関係)が如何に大切かを痛感し、反省することしきりでした。