11/1日(土)徳山出身の浅田栄次博士が召天して100年目にあたり、周南市立中央図書館に於いて、記念式典とシンポジウムが開催されました。
浅田栄次博士は、ゼカリヤ書(旧約聖書神学)研究によって、名門シカゴ大学初の博士号(哲学)取得者で、帰国後、青山学院で神学の教鞭をとり、後に、現在の東京外国語大学の礎を築き、日本の英語教授法の先端を切り開き実践なさった郷土が生んだ偉人です。
このような明治の国際人である浅田博士の学問的精神を広く紹介することを目的として、今回の企画が徳山英学会世話人の河口昭先生を中心に練られ、周南市や教育委員会、並びに周南市立中央図書館の館長以下職員の方々の献身的協力を得て、開催されました。
式典では、周南市長や教育委員長の祝辞に続き、シカゴ大学日本同窓会プレジデントのニール・ファウスト氏によって、シカゴ大学総長の祝辞が読み上げられました。また、東京外国語大学学長や、在シカゴ総領事からの祝辞も紹介され、格調高い式典となりました。
式典の中では、周南市の小学生による、浅田栄次の生涯をとてもよく演出した演劇がスクリーンで紹介され、その当時、浅田栄次役を務めた高校生や出演者へ、教育委員長より記念品の贈呈がありました。生徒たちの前途洋々たるキラキラした目の輝きが印象的でした。
いずれもすばらしい祝辞で、最高の賛辞が浅田に贈られていましたが、中でも、浅田を理解する上で重要な点に触れておられるのは、個人的には東京外国語大学学長のこの一文と感じました。
「言葉を学ぶと同時に、その背景となる精神を学び、真の国際人にならんことを学生に求めておられた様子が窺えます。浅田先生は、ドイツ語・フランス語・ギリシア語・ラテン語・古代セム諸語に通暁し、エスペラントの普及にも尽力され、一方、漢文・仏教にも造詣が深く、自ら和歌も作られたと伺っております。先生ご自身、日本人としてのアイデンティティーを保ちつつ、世界に目を向けたグローバル人材であり、その精神をもって学生の教育にあたっておかれた姿が想像されます。」
浅田は、語学を学ぶために海外へ留学したのではなく、研究を進める上で重要なツールとして必要な言語を一つ一つマスターし、研究の核心に迫っていきました。その精神こそ、語学学習の本来の意味と意義であると思います。
また、自分が何者であるかというアイデンティティーは、単なるナショナリズムに陥らず、世界を展望する上で大切な自己基盤として理解していたことが、彼を理解する上で重要なポイントであろうと思います。
真理の探究のため、また、国際理解のための重要な手段として、語学学習が如何に重要であるかを、再認識させられ、自らの職務に対する情熱を奮起させられた、記念すべき式典となりました。