「羊のために命を捨てる羊飼い」8/21隅野徹牧師

  月21日 聖霊降臨節第12主日礼拝
「羊のために命を捨てる羊飼い」隅野徹牧師
聖書:ヨハネによる福音書 10:7~21


説教は最下段からPDF参照・印刷、ダウンロードできます。

 現在山口信愛教会の主日礼拝では、ヨハネによる福音書から続けて御言葉を味わわせていただいています。前回からの箇所であるヨハネによる福音書10章は、先週お話ししたように「紀元1世紀末の教会の状況を反映させてヨハネが記した」と言われています。

1世紀の末、イエスを救い主と認めないユダヤ教の指導者たちによって、クリスチャン達は迫害を受けるようになっていて、ユダヤ人のクリスチャンであっても「ユダヤ人の共同体から追放される」ということが起っていたのです。

ファリサイ派の人々は、罪人たちを導く真の羊飼いとして来られたイエス・キリストを救い主と認めないばかりか、「自分たちこそが神の民イスラエルを導く羊飼いだ」と自負していました。しかし!実際のところは、1節のイエスの言葉にあるように「正しい門を通らない彼ら」が、「羊を追い散らす盗人になっていた」のでした。

この聖書の言葉は今の時代にも大切な示唆を与えるものだということを先週お話ししました。イエスという門を通ってきた羊飼いがいるだけでなく、ほかの羊飼いのふりをしているが実は盗人であり強盗である者がいて、群れを荒らすということは、いつの時代も起こっているのです。私たちは「羊飼いと盗人」をきちんとと見分けなければならないという話をしてメッセージを閉じました。

今週はいよいよ「牧師の羊飼い」でもある「大牧者であるイエス・キリスト」ご自身の教えが記されている10章の7節以下を読みます。

19節から21節は、イエスの話を聞いた「ユダヤ人指導者の反応」について記された箇所ですので、割愛させていただきます。今朝は羊飼いであるイエスご自身についての「大切な3つの教え」からお話しさせていただきます。

1つ目は「羊のことを良く知り、信頼関係を結ぼうとする羊飼い」についての教え、2つ目は「囲いに入っていない羊をも豊かに導く羊飼い」についての教え、

3つ目は「自ら命を捨て、羊に命を与える羊飼い」についての教えです。この三つのポイントから大切な教えを深く味わって、皆様が「今日からまた新しく歩み出していただければ!」と願います。

まず7節から14節を読んでみます。皆さんも目で追ってみてください

ここには「雇い人に過ぎない者」と「まことの良い羊飼いであるイエスご自身」との違いが語られています。

羊を置き去りにして逃げ、羊を狼に襲われるままにする雇い人は、1節に書かれている「羊を盗んだり屠ったり滅ぼしたりするために来る盗人や強盗」と同じなのです。この盗人・強盗に例えられているのは、クリスチャンたちをユダヤ人のコミュニティから追放したユダヤ人指導者たちのことを指している、と言われます。

 ただこの部分で教えられていることは、「誰が羊飼いにふさわしい人物なのか」ということではありません。そうではなく「人間の指導者が牧者なのではなくて、イエスご自身だけが本当の意味での羊飼いである」ということです。

そして、大牧者であるイエスご自身が「ご自分の羊の群れをどのように牧して下さるのか」が教えられるのです。イエスがどのようにして私たちを牧してくださるのか、そこを掘り下げてみてまいりましょう。

まず12節13節をご覧ください。羊のことを心にかけていない、つまり「大切にしていない」ただの雇い人の羊飼いは、羊が危機に陥っているとき、羊を置いて逃げ出してしまいます。

私の聖書には、この12節のところに赤い文字で「牧師として胸に迫る言葉」と記してあります。いつ記したかは覚えていませんが、神様から託されている皆さんのような方が大変な時、そこから逃げ去ってしまうような「ただの雇い人牧師」になることがないように、肝に銘じてまいります。

このようにただの雇人にすぎない「悪い牧者」が描かれるのと対照的な「良い羊飼い」として、ご自身のことを示されるのです。

良い羊飼いの譬えで、まず覚えたいことはイエスがご自分の父なる神との間に持っておられる信頼関係と同じ「信頼関係をもって」私たちとの間にも築くようにして牧そうとしておられる」ということです。

これまで読んできたヨハネ福音書にも度々出てきましたが、イエスと父なる神が「一つであり」その御心を「完全に行われている」ことが教えられてきました。これと同じ関係ができるように私たちを牧してくださるのが「イエス・キリスト」なのです。

14節15節には、「知る」ということばで、その信頼関係が表されています。

普通の「雇人のような羊飼い」なら、羊のことをそこまで知ろうとはしないでしょう。「知ろうとしる思い」があるということは、それだけ相手を大切に思い、愛すればこそです。

私も小さな牧者として、もっともっと皆さんのことを知りたいです。忙しいように見せてしまっていたら申し訳ありません。ぜひ主にあっていろいろと交わり、思いを聞かせていただきたく願います。

このようにイエス・キリストは「ただ義務的に私たちの命を養う方」ではなく、

父なる神と子なるキリストが互いを良く知っておられるように、「私たちをも良く知っておられる羊飼いである」のです。そして、一方的に知っておられるだけではなくて、「私たち人間の側にも、ご自身をよく知っていただいて」さらなる信頼関係を築きたいと願っておられる、そんな「愛に満ちた羊飼い」でもあるのです。だから私たちも、神・キリストのことを、聖書を通して、さらに深く知っていきましょう。

 そしてもう一つ大切なのが「囲いに入っていない羊をも豊かに導く羊飼い」

(16節を読んでみます)

ここで示されるよい羊飼いは「囲いの中にる羊が危ない時、ただ守りを固められる」そんな羊飼いではありません。

そうではなく仲間を増やしてくださる。そんな羊飼いなのです。つまり「家族を増やして下さる。出会いを与えて共に歩む恵み」を増やして下さるお方なのです。

 コロナが始まった頃、私はこんなことを思ったことがあります。

「コロナが収まるまでは、教会に新しい方をお迎えするのは無理かもしれない。今おられる方だけでの歩みがしばらく続くのではないか…」しかし、この私の考えは実に浅はかなものだったと反省いたします。

 コロナの中でも大牧者である神・キリストは、新たにこの教会に加わる仲間を沢山与えて下さいました。そして、それらの方々とともに交わる機会を通して、大変大きな恵みを得ることができました。皆様もそうだと思います。

 本当に本当に大きな感謝です。

このように、イエスが牧する「羊の群れ」は、新たな出会いの恵みにあふれ、主にあって「一つとなって」共に歩める仲間が増えることを感謝できる群なのです。 それぞれ違いはあるけれども、主イエスという大牧者に命を養われる「一つの群である」のです。 なんと大きな恵みでしょうか?

世はこれとは真逆です。違う人々を受け入れず、分断が進みます。我が国においても「自分の国を守り抜くために、強力な武器を持たねばならない」という考え方が根強くあります。

今いる仲間だけが「守られる」ためには何をしても許されるのでしょうか?私は違うと思いますが、今回の箇所の16節もそれを示していると個人的に思うのです。

世界の中のキリストを信仰しない人の考え方ももちろん大切にし、受け入れることは大切ですが、世界を「一つの群れにする羊飼い」は、十字架で死なれるほどにすべての人を愛し抜かれた「イエス・キリスト」お一人だ、ということを改めて示されます。戦乱、分断の今の世ですが、世界の多くの人が「イエス・キリスト」にあって一つとなることを願ってやみません。

最後にイエスご自身が「自ら命を捨て、羊に命を与える羊飼いである」ことに注目してメッセージを閉じます。

17節、18節をご覧ください。これは完全に「十字架と復活」を暗示されている言葉です。ここでイエスは「再びうけるために自分で命を捨てる。しかし受けることができる」とある言葉はなかなか理解しにくいです。

しかし、イエスは自分で「生き返る」とか「命を生み出す」とは仰っていません。あくまで「父なる神が愛してくださる」ことが前提にあって「その父なる神が、新しい復活に命を与えてくださる」と仰っているのです。

私が礼拝説教でよく引用するフィリピ書2章と重なります。開かれなくて結構ですが、フィリピ2章7節から9節にこんな言葉が出ます。

「かえって自分を無にして、僕の身分となり、人間と同じ者になられました。人間の姿で現れ、へりくだって、死に至るまで、それも十字架の死に至るまで従順でした。このため神は、キリストを高く上げ、あらゆる名にまさる名をお与えになりました。」

この部分の最後の「神は、キリストを高く上げ、あらゆる名にまさる名をお与えになりました」とは「神が、十字架の贖いの業を従順に成し遂げられた御子イエスを復活させられたのだ」ということを教えています。

この復活につながるイエスの十字架で「命をすてられたこと」ですが、それはご自分のためではなく、私たち羊のために他なりません。10節にある通り「羊である私たちが豊かに永遠の命をうけるため」に他なりません。こんな愛の羊飼いに養われていることに改めて感謝して、今日から新しく歩んでまいりましょう。

(沈黙・黙祷)

 

≪説教はPDFで参照・印刷、ダウンロードできます≫

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