「悔い改めと赦しの恵みに与った129年」7/19 隅野徹牧師

  7月19説教 ・聖霊降臨節第8主日礼拝
「悔い改めと赦しの恵みに与った129年」
隅野徹牧師(日本基督教団 山口信愛教会)
聖書:ルカによる福音書17:1~4

説教は最下段からPDF参照・印刷、ダウンロードできます。

 今日の礼拝は「山口信愛教会の創立記念礼拝」として持たせていただきます。

 いまから128年前の1891年、明治でいうと24年、アメリカ人宣教師のミス・ケイト・ハーラン女史らが、英語や裁縫の学校を開いて、青年男女を集めて、この山口で布教を開始しました。同じ年1891年の7月20日に12人もの青年がイエス・キリストを救い主だと告白し、洗礼を受け、最初の教会員が誕生したのです。

 山口信愛教会では、この1891年7月20日を教会の創立日として記念し、その日に一番近い日曜日に「創立記念礼拝」として持たせていただいています。

 1年52回ある礼拝の中でも一番「教会の歴史、これまでの歩み」を覚え、感謝する今日の礼拝…これを迎えるにあたり、私は教会の歴史を新たに学べるものはないかと、色々捜していました。そうすると、牧師室の奥の棚から「お宝のような文書」が出てきました。

 それは5代前の「林健二牧師」がまとめられた、創立の1891年から1968年までの77年間の歴史を記録したものです。 何年に誰が洗礼を受けられた、誰が転入されたという記録だけではなく、それらの方々の「人となり」がよく分かるエピソードも細かく記されています。また、礼拝の様子や、各会の様子、祈祷会の様子、特別な集会の様子まで、本当に細かく記されています。

 全部で143頁。すべて文字でびっしりですが、感動する内容も多く「この山口信愛教会を通して表された神の業」を詳しく知ることができます。

 本日は、ここに書かれた内容のほんのごく一部しかご紹介できませんが、いつか皆様に「この全部を読んでいただきたい」そんな願いを持ちました。

 さて、こんな貴重な資料が与えられた今年の「創立記念礼拝」ですが、示された聖書箇所は、ルカによる福音書の17章1~4節です。ここは1ヵ月ほど前、瞳牧師が説教箇所として選んだ箇所の一部ですが、林健二牧師が記して下さった「信愛教会の歴史」と併せ、再び深く味わいたいと願います。

 今朝私は、メッセージで2つのポイントからお分かちします。

 1つ目のポイントは、小さな信仰者を大切にする、ということ。

 2つ目のポイントは、悔い改める者を何度でも赦し、受け入れることの大切さ、です。

 まず「小さな信仰者を大切にする」ということについてです。これは1節、2節で見て取れます。(1節と2節お読みします)

 2節には「ゾッとする」ような言葉が出ます。

 首に重い「ひき臼」をひもで懸けられて、海に投げ込まれる…想像しただけで恐ろしい気持になります。どうして神の子イエス・キリストがこんなことを言われるのだろうかと思ってしまいます。

 イエスが「重いひき臼につながれて、海に投げ込まれた方がまし」といわれている人は一体誰かというと…それは2節から「小さい者をつまずかせる人」のことです。このことから、イエス・キリストは「小さい者たちの信仰」「信仰の若い芽」を大切なもの、重いものと考えておられることが分かります。

 しかし、一方、1節では「つまずきは避けられない」とイエスは言われているのです。矛盾していることを言われているように感じます。これは「仲間につまずかずに歩き続けられる信仰生活などない」ことを示される一方で、「信仰の若い芽が」育たなくなる原因を、教会の仲間がつくってしまうことがないように注意しなさいということが教えられるのです。

 「小さい者」とはまだ信仰に入ったばかりで、堅い信仰に立っていない人のことです。まだ歩みはたどたどしくても、希望にあふれながら信仰生活をスタートした「小さい者」がつまずくことを神・キリストがどんなに悲しまれるか、そして怒られるかを、この聖書箇所から覚えていましょう。

 私たちは「自分が教会の中で、信仰の若い芽を摘まないように気を付ける。もちろん育てること大切にする」ということを深刻に、真剣に考えているでしょうか?

 信愛教会のこれまでの129年の歴史は「自分が送る信仰生活の充実」だけでなく、次の人が救われることを真剣に祈り、そして「信愛教会に与えられた信仰の若い芽を大切に育て続けた129年だったのではないか」と感じます。とくに今回

 林健二牧師の細かな記録を見て、その思いは確かなものに変わりました。

 教会学校を覚えて下さるある一人の姉妹の行いに心から感謝しました。それは今仁保病院に入院してらっしゃる國重雍子姉妹です。

 林先生の記録によると、1950年、昭和25年の記録に次のような文が出てきます。

 4月には、湯田の「野原医院、國重家で日曜学校分校が復活し、白石喜代(※当時の牧師先生)、野原貞子、浅井英子、牛島竜像が日曜午後二時からの奉仕に当たった。

 日曜の集会といえば、本校、分校の日曜学校のほかに、聖書研究会が朝9時から30分牧師館で、午後3時半から湯田の野原医院、木曜日の昼休みには県庁で聖書研究が行われていた。6月には、各組での「家庭聖書研究」が実施され、かつての捕虜、戦後に伝道者になったデシーザーの特別集会が、山口教会と連合で開かれた。 (中略) この年のクリスマス礼拝には20名が受洗した。

 ご自身の家を開放して下さり、日曜学校や聖書研究会を持たせてくださった國重雍子さん。今度訪問がかなったら心からのお礼を言いたいと思いました。

 子どもや若い信仰の芽を一生懸命育ててきた山口信愛教会です。つまずきになるのではなく、むしろ希望を持てるように、先に信仰を持ったものが一生懸命に励む…そのようなこの教会の良さを、この先も持ち続けましょう。

 聖書に話を戻します。ルカによる福音書17章の1~4節から示される大切なポイントの2つ目。それは、悔い改める者を何度でも赦し、受け入れることです。これは3節、4節から教えられることです。(※読んでみます)

 イエスについてきた弟子たち、召された使徒たちは、まったく違う環境で育った者の集まりでした。それらの人々が同じ「神の子イエスに着き従う生活」を送るのですから、当然ぶつかり合いもあったことでしょう。つまずきは避けられなかったことでしょう。しかし!それでも赦し合いなさいとイエスは教えられるのです。

 しかも!一日に七回も赦せとおっしゃるのです。一回赦すのもとても難しいのに、一日に何度でも、無限大に愛せというのがイエスの教えです。これは「正しいのは私だ!」という態度を取っている限りできないことです。現代の私たちにあてはめるなら「クリスチャンはこうあるべきだ!教会はこうあるべきだ!」という態度です。こういう態度を取っている限り「仲間を何度も赦す」「意見の衝突があっても、それでも和解するということ」は不可能です。

 このことも山口信愛教会の歴史から学べることであります。林先生の歴史のまとめを読んでいて感じた山口信愛教会の特徴の一つは「転入会者が、溶け込み、一緒になって神の業を表す」ということが多いということです。

 公務員が多い町の特徴でしょうか、また近くに大学があった影響も大きいのだと思いますが…随分多くの方が、他都市の教会から転入会され、また移動されることも多いのが記録から改めて分かりました。大陸にあった教会から移って来られた方も多いですし、東京などでお仕事をされたあと、山口に戻って来られ転入され、教会を支えた方がたくさんおられます。

 転入された方は、それまで集っておられた教会と、山口信愛教会に違いを感じることは多かったことでしょう。もともと信愛教会におられた方々にとっても違う背景を持つそれらの方々との違いを感じることは多かったでしょう。正直ぶつかり合いもあったことでしょう。しかし、互いに間違ったことは「悔い改め合い、赦し合って」この129年歩んでこられたのだと感じます。

 今日の聖書の箇所は「赦しの教え」に目が行きますが、3節に大切な言葉が出ていることに注目しましょう。「もし罪を犯したら戒めなさい」と教えられています。

 これは文脈からいって「信仰の兄弟姉妹の間で起こる罪を戒め」のことですが、それをして悔い改めを求めるようイエスはお命じになっているのです。

 見て見ぬふりをして表面的に仲良しに見える交わりを築いても、それは教会として愛し合うことにはならないのです。戒めるのは赦すためなのです。お互い悔い改めあって「本当の交わりを回復するため」なのです。これは感情的に叱責し、断罪することとは明らかに違います。

 イエスは、「一日に七回あなたに対して罪を犯しても、七回、『悔い改めます』と言ってあなたのところに来るなら、赦してやりなさい」と言われましたが、そのような赦しの思いの中でこそ、本当に相手の罪・間違いを戒めることができるのではないでしょうか?

 「戒めて赦すこと」と、一方で「悔い改めること」の両方が、一緒にキリストを信じる群れの歩みでは本当に大切になるのです。

 先人たちがそうしてきたように、私たちはこの先も「互いに戒め、赦し合い、悔い改め合い」ましょう。そして、小さな信仰者、信仰の若い芽を大切に育ててまいりましょう。それがこの先150年、200年につながっていくと信じています。(祈り、沈黙)

 

≪説教はPDFで参照・印刷、ダウンロードできます≫

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